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旅、ごはん、歌、臨床心理の勉強など興味のあることと、考えたことの記述

よいホテルの条件と、取り憑かれることについて(メモ)

ホテル・ニューハンプシャー」の終わりの方にでてきた、父さんが語る「よいホテルの条件」は、自分が心理士として人に関わるとき目指したい役割と似ているように思った。また読み返せるように、ここにメモしておきます。

 

「つまり、わたしはどうしても誰かに話を聞いてもらう必要があったんですが、気持ちの整理がつくまでは、何もかも話さなくてはいけないとは思いたくなかったんです。そしてここのいいところは、誰も強制しないことです。どういう気持ちをもつべきだとか、どういうふうにすべきだとかいう人は誰もいません。むしろ、ひとりではなかなかそういう気持になれないのを、もっと簡単にそうなれるように手を差し伸べてくれるのです。わたしのいうことがわかっていただけるかしら」と、シルヴィアは言うことだろう。

 そして父さんは言うだろう、

「むろん、あなたの言うことはわかりますよ。何年もこの仕事をしていますが、それこそよいホテルの資格というものです。つまり、空間を提供するだけなのです、それから雰囲気をね、みなさんが必要としているものにふさわしいような。よいホテルというのは、空間と雰囲気を何か寛大なもの、おもいやりのあるものにするのですーーーよいホテルは、みなさんがそれを必要としているとき(そしてそのときだけ)みなさんに手を触れる、あるいはやさしい言葉をかける、そういったような意思表示をするのです。良いホテルは、つねにそこにあるけれど」父さんは野球のバットで彼の詞と歌の両方の指揮をとりながら言う、

「しかし、まとわりついていつも監視しているというような気持は決して与えないものです」

「そうですね、そのとおりだと思いますよ~どういうわけか、全部わたしから引き出してしまうんだけど、それが決して力づくじゃないんです」彼女たちは言うだろう。

「さよう、決して力づくじゃないんですよ」父さんは同意する。「よいホテルは何ごとも強制しないのです。わたしはそれを共感空間と呼びたいですな」

(中略)

「それに」とシルヴィアは言う、

「ここはみなさん親切です」

「さよう。それこそわたしの気にいっているよいホテルの条件ですよ!」

「もし第一級のホテルに部品として、こわれた部品としてくるなら」父さんはとめどなく続ける、

「その第一級ホテルを発つときには、ふたたびもとの完全な姿になっている。わたしたちは完全に元どおりにして差し上げる、しかしそれはほとんど神秘的な形で成しとげられるーそれがわたしのいう共感空間なんでねーなぜならふたたび元どおりになるよう強制することはできないからです。自分なりの方法を作り上げていかなくてはなりません。わたしたちはその空間を提供するのです」「空間と明りを」

 

それから、もうひとつ参考になったのは「取り憑かれる」ということについてもメモ。

 

ボブ・コーチは最初からそれを知っていた。取り憑かれなければいけないし、しかもそれを持続しなくてはいけないと。開いた窓の前で立ち止まってはいけないのだ。

 

これは主人公の祖父の忠告。取り憑かれなければいけない、それはなぜなのか。取り憑かれたような人はときどきみっともない。けれどもとにかく立ち止まらない。そのおかげで知らない間に、もっと大きな恐ろしい影(自分の中にあるもの)から逃げ切れるのかもしれない。