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あるある防衛機制:「反動形成」「打ち消し」

 防衛機制は言ってみると「人間あるある」である。自分の中にも他者の行動にも見受けられるちょっとした、ときには大きな「違和感」を分類し、その心的状況の説明を凝縮したかたちで名付けたものである。

 フロイト.Sが提唱し、フロイト.Aがまとめた防衛機制には「抑圧・反動形成・投影・退行・同一視・昇華・置き換え・合理化・知性化・逃避」、クラインの提唱した原始的防衛機制には「分裂・否認・投影性同一視・原始的理想化/脱理想化・躁的防衛」などがあり、単語だけ聞いても分かりづらいけど、例を追ってみるとけっこう分かり易いし、面白い。

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「反動形成」の最も端的な例は「好きな子をいじめる」というもの。やや固くなるが「自我にとって受け入れ難い感情や衝動が表面化・意識化するのを防ぐために、正反対の行動や態度をとること」と説明される。

 

<好きな子をいじめるA君

小3男子A君が大好きな女子Bちゃんの髪を引っ張ったり、悪口を言ったりする。A君は本当は、昨日もけしごむを貸してくれて、教科書を忘れたときは見せてくれた、隣席のBちゃんが大好きなのだ。しかし、まさか男子である自分が「女子を好き」だなんて許せない、恥ずかしい、気持ち悪い、格好悪い。彼らは、男女が見つめ合う写真を見るだけで「うえぇぇ~~~気持ち悪ぅ~~~~」と大声で叫びながら、しかめた顔を見合わせて喜ぶ(?)複雑なお年頃なのだ。小3男子たるもの、女子を好きであってはならない。そこでAの自我は、自分を守るために、無意識下で決断する。ああ、俺はあいつのことが、むしろきらいであると。「すき」の反動で「きらい」を形成したのだ。

 しかし、うっかりしてると本当は「すき」なものだから、彼女を見ると困ってしまう。ドキドキするし、さわりたい。こうなったら「きらい」の証しに、いじめる他はない。その結果、Bに泣かれて、おせっかい女子に先生に言いつけられて、おこられる。しかし俺が「Bをきらい」であることだけは、証明できた(とAの無意識は思っていることだろう)。先生方から見ると「A君Bちゃんが好きでしゃーないねんな〜」ということがバレバレなんだけど。

 

 そんな男子は微笑ましいけれど、そうでもない例もたくさんある。調べてみると「馬鹿丁寧&慇懃無礼、猫かわいがり、強すぎる正義感、内弁慶、強がり」などの態度も「反動形成」である可能性がある。これは自分にも思い当たるふしがある。

 ああ、確かに「ふざけんな」と思っているときほど「馬鹿丁寧」な言葉が出るね。あれは「反動形成」で自我を防衛していたんだな。そうでなければもっと「普通の丁寧さ」で対処できたはずなのだ。そういえば、極度に苦手な人にばったり会ってしまったとき、思いがけないような笑顔で対応したこともある。自分でも驚き、私は案外さっぱりした人間だなと思ったものだったが、あれも「反動形成」だったのかもしれない。

  また逆に、私は好きな人にほどなぜかそっけない態度をとってしまう節もある。好きであればあるほど、あまり顔も見ず、リアクションも薄くなる。帰り道で「あーあ、せっかく会ったのにな?」と思う。なぜそんな態度をとるかは自分にもわからない。単なる照れ隠しというものでもないのだ。好きな人でもしっかり話せる場合もあるので、他の要素がからんでいる可能性もあるのだが、これが「反動形成」だと仮定すると、私は小3男子と同等レベルのようだ。

 この「自分でも思いがけないような」とか「なぜかわからない」というところが「反動形成」の防衛機制たる所以で、意図してやっているならばソーシャルスキル、あるいは計算や駆け引きである。「好き・嫌い」の感情は自覚していたとしても、無意識にその行動や態度をしてしまう場合は防衛機制と捉えていいような気がする。巷の恋愛話に出て来る語で考えると「好き避け」は「反動形成」の所産である可能性が高いが、「小悪魔」は技術者である。 「ツンデレ」はどちらの可能性もあるように思われる。

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 「つづき」に続く